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資産運用ニュース |
2025.04.18 |
小川竜一 R-TRUST investors Inc. |
2025年、新たな投資ステージの幕開けです。世界経済の先行きが読みにくい中、「金(ゴールド)」が頼れるヒーローのように注目を集めています。まるで映画の予告編のようにワクワクする展開ですが、実際にゴールドはポートフォリオの救世主となり得るのでしょうか?株式や不動産、FX(外国為替)や暗号資産に投資してきた皆さんも、今こそ黄金の盾を手に取る時かもしれません。ゴールドを20~40%組み入れた投資戦略の可能性を一緒に探ってみましょう。
金は古くから「有事の金」と呼ばれ、経済の混乱期にその価値を発揮してきました。株や不動産が経済成長の恩恵を受けるのに対し、金はインフレや危機に強い安全資産として重宝されてきました。たとえば、1987年以降に株式市場が15%以上暴落した局面では、S&P500株価指数が平均-24%と大きく落ち込む中、金は平均+5.83%ものプラスリターンを示しました。金は株式とは逆方向に動きやすく、嵐の中で資産を守る「保険」のような役割を果たしてくれるのです。
さらに注目すべきは、金をポートフォリオに加えることで得られるリスク分散効果です。金は他の主要資産との連動性(相関)が極めて低く、価格の動きが独立しています。下の表は1973~2021年の金と代表的資産の相関関係を示したものです。金の各資産との相関係数は平均0.00とほぼゼロで、株式とは-0.01、長期国債とは+0.01程度しか一緒に動きません。一般に相関係数が低い資産を組み合わせると、ポートフォリオ全体の価格変動を抑え、安定性を高めることができます。このため金は「分散投資の強い味方」なのです。
金はまたインフレヘッジとしての一面も持ちます。紙幣と違い発行量が限られるため、物価が上がって通貨の価値が下がる局面でも、金そのものの価値は保たれやすいのです。中央銀行が自国通貨の価値安定のために金を保有するのも、こうした理由からです。実際、近年は各国中央銀行が競って金準備を積み増しています。2022年には世界の中央銀行が過去最多の1,082トンもの金を買い増し、2023年もそれに次ぐ1,037トンを追加しました 。中央銀行の約29%が「今後さらに金を増やす予定」と回答し、過去最高水準で金積極姿勢を示しています。このように各国のお墨付きを得ている点も、金の心強いところです。
では、金は他の資産と比べてどんな特徴があるのでしょうか?ここでは株式、不動産、FX(外国為替)、暗号資産(Crypto)という主要アセットと金を比べてみます。それぞれリスクとリターンの個性があり、組み合わせ次第でポートフォリオの性格も変わります。
以上をまとめると、株式や暗号資産は成長エンジン役、不動産と金はインフレ耐性や安定感役、FXはスパイスといった位置づけでしょうか。それぞれ単独では欠点もありますが、組み合わせることでお互いの弱点を補い合うことができます。そして金は特に、他資産が値下がりする局面で頼れる「守りの要」として光る存在なのです。
それでは本題です。もし皆さんのポートフォリオに金を20-30%、あるいは思い切って30-40%と大きめに組み込んだら、一体どんな未来が描けるでしょうか?初心者の方にはピンと来ないかもしれませんが、要するに「金をドーンと増やしたら儲かるの?安全になるの?」という疑問です。ここではいくつかのシナリオを考え、金高比率ポートフォリオの可能性を探っていきましょう。
まずは景気が安定成長を続けるハッピーな展開です。企業収益が伸び、株式市場が順風満帆で上がっていくような場合、教科書的に言うと残念ながら金の出番は少なくなります。金価格はむしろ横ばいか下落気味になるかもしれません。なぜなら投資家は安全な金よりも、成長恩恵を受ける株式や不動産に資金を振り向けるからです。例えば2010年代の米国では低インフレ・堅調成長が続き、株式が大きく上昇する一方、金は2011年の高値からしばらく低迷しました。したがって、好況シナリオでは金を30%も持っているとポートフォリオ全体のリターンは抑えられ、株だけに投資していた場合より儲け損ねる可能性があります。
しかし、一方でリスクは低く抑えられます。株が絶好調とはいえ常に上下動はありますが、金を半分近く持っていれば値下がり局面でもポートフォリオ全体ではクッションが効きます。いわば「高成長の果実は少し減るけれど、その代わり夜も安心して眠れる」状態です。金40%ポートフォリオは、リターンは控えめでも値動きが安定した堅実型になると考えられます。これはリスクを嫌う方には大きなメリットです。特に資産を守ることを重視する人にとって、金の多めの配分は安心感につながるでしょう。実際、ある分析では金を20%組み入れたポートフォリオは、従来の株60%・債券40%のバランス型に比べリスク(変動)が低下し、リスク調整後のリターン(シャープレシオ)が向上することが示されています。金比率を増やすほどリスクはさらに下がりますが、一方でリターンも少しずつ低下するため、平時における効率のバランスは20%前後が最適という結果でした 。金30~40%はやや守りに寄りすぎますが、「負けにくさ」という点では非常に強いポートフォリオになると言えます。
次に、経済があまり芳しくなく、物価だけがグングン上がってしまう嫌なシナリオです。これは1970年代の「スタグフレーション」に近い状況です。この場合、金が真価を発揮するでしょう。インフレで現金の価値が目減りするとき、金はその希少性から価値が上がりやすくなります。また景気停滞で企業業績が悪化すれば株価は低迷しますが、投資マネーは代わりに金へと流れ込みます。実際1970年代の米国では、株式がほとんど上がらなかった一方で金は年率+18%もの上昇を遂げました。つまり「株が振るわぬ時代のヒーロー」が金なのです。
このシナリオで金を30%も持っていたら、ポートフォリオ全体ではかなりのダメージ軽減効果が見込めます。極端な場合、株や不動産の損失を金の利益が穴埋めし、トータルではプラスを維持できるかもしれません。金40%ならなおさら強力です。高インフレ・不況という逆風下では、金大量保有ポートフォリオは「減らない」どころか資産を大きく伸ばす可能性すらあります。投資家心理的にも、周囲が悲鳴を上げる中で自分の資産はびくともしない、むしろ増えているとなれば心強いですね。金はそんな非常時に頼れる「避難所」の役割を果たします 。
とはいえ、金ばかりに頼ったポートフォリオにも注意点があります。景気が停滞すると中央銀行は利上げでなく利下げに転じる可能性があります。利下げは債券や預金の利回りを下げるため金には追い風ですが、景気対策が功を奏して状況が改善すると、今度は株式が復活して金が下がる展開に転じるかもしれません。シナリオは刻々と変化します。ですから常に一定割合を金で持つ戦略は、どんな経済状況でも資産の安定を図る上で有効ですが、残りの資産部分とのバランス調整も忘れずに行うことが大切です。
最後に、戦争や金融危機など突発的な有事のシナリオです。この場合は言うまでもなく金の独壇場でしょう。世界が混乱に陥ると、人々は「価値がゼロになるリスク」のある資産を避け、信用のおけるもの――歴史的に価値が保たれてきた金や米国債など――に殺到します。金価格は急騰し、株式市場は暴落する、といった極端な動きも起こりえます。記憶に新しいところでは、2020年初頭のコロナショックで株が急落した際、金価格も一時的に下げましたがすぐに反発し、その年の夏には過去最高値を更新しました。さらに米中対立や中東情勢が緊迫した局面でも、安全資産として金に買いが集まる傾向が見られました。
金がポートフォリオの30~40%を占めていれば、こうした有事には資産防衛力が格段に高まります。株や暗号資産が半減するようなショックでも、金がそれを補って資産の目減りを防いでくれる可能性が高いです。実際、1987年以降の主要な急落局面の大半で、金はプラスのリターンを記録しポートフォリオの下落を和らげました。例えば、リーマン危機(2007–2009年)では米株が半値近くに暴落しましたが、金はその期間に約+25%上昇しています。また、コロナショック(2020年)でも米株が3月に急落する一方、金は年初から年末にかけて約+25%上昇し、年間を通して見れば株式の損失を十分カバーしました。金40%もあれば、最悪株式0になっても資産全体の半分以上は健在という計算ですから、非常時の安心感は絶大です。「金こそ究極のセーフティーネット」と言われるゆえんですね 。
もっとも、有事の後にはまた平時が訪れます。有事で金が活躍した後、その比率をどうするかも検討ポイントです。危機が去って経済が正常化し始めたら、少しずつ金の比率を下げて成長資産に振り替える、といった柔軟な対応も有効でしょう。つまりシナリオに応じて金の比率を機動的に変えるのが理想ですが、それはなかなか予測が難しいのも事実です。そこで結論として、20-40%程度の金を常時組み入れておく戦略は、「予測は外れるもの」を前提にどんな局面でも大崩れしない堅牢なポートフォリオを築く有力な方法だと言えます。
さて、2025年以降の投資環境を考える上で無視できないのがトランプ政権の影響です。ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲いた今、経済政策や外交方針の転換が市場にもたらす影響は計り知れません。不透明感が増す局面では、安全資産である金の重要性が一層高まるでしょう。ここではトランプ政権で想定されるポイントを整理し、それぞれ金との関係を考えてみます。
以上のように、トランプ政権下では今後も経済・外交両面で不確実性(=リスク)が増すと予想されます。その不安を和らげる手段として、金はますます重要なポジションを占めるでしょう。現に2024年の段階で「地政学的不確実性が金価格を押し上げ、2025年には1オンス=3,000ドルに達する可能性が高い」と予測する声が多く上がっていましたが、すでに2025年3月の段階でその大台も突破しています。大手銀行各社も2025年の金相場についてさらなる強気の見方を示しています。ゴールドマン・サックスは2025年末の金価格予想を従来の2,890ドルから3,100ドルへと上方修正し、強力な中央銀行需要が支えになると分析しています。JPモルガンも「金は2025年に向け過去最高値圏で推移し得る」としており、トランプ政権による不透明感がむしろ金の強気相場を後押しすると見ています。まさに「トランプ劇場」の裏で、黄金が静かに輝きを増すイメージです。
文章だけでは実感が湧きにくいかもしれませんので、最後にデータを交えて金の実力を振り返りましょう。
長期の歴史を振り返ると、金は緩やかながら着実に価値を増してきた資産だと分かります。1920~30年代の大恐慌、70年代の高インフレ、2000年代のITバブル崩壊や2008年の金融危機など、市場の危機という危機を経験しつつ、金の価格は大きく成長してきました。例えば1973年に1オンス=約100ドルだった金は、2024年末には1オンス=2,000ドル超と50年で20倍以上に上昇しています(年平均換算で約8%程度の伸びに相当)。一方、米国株式は同期間で約100倍以上(年平均約10%強)の成長を遂げました。この比較からも、金は株式ほど爆発的なリターンはないものの、インフレを上回るペースで着実に価値を高めてきたことが分かります。特に「失われた10年」と呼ばれる時期に金は輝きを放ちました。1970年代の米国株は停滞しましたが金は急騰、2000年代初頭も株式低迷期に金は上昇しています。逆に言えば、株式好調期の2010年代には金は影を潜めました。金と株式はシーソーのような関係にあり、だからこそ両者をバランスよく持つことが重要なのです。
また直近数年の動きを見ると、金は2020年代に入り再び脚光を浴びています。2022年は株式と債券がそろって二桁の大幅安に見舞われた異例の年でしたが、金はほぼ横ばいで価値を保ちました(むしろ通年ではわずかに上昇しプラスを確保しました) 。加えて2023年から2024年にかけては、世界的なインフレと地政学リスクの高まりから金価格が上昇し、何度も過去最高値を更新しています。2024年には年初来で+10%以上値上がりし、史上初めて1オンス=2,900ドル台に乗せる場面もありました。対して株式も2023年は堅調でしたが、ボラティリティ(変動)は高く不安定でした。暗号資産に至っては2022年に大暴落した後、2023年にかけ回復するものの乱高下が続いています。金はこの数年、他のリスク資産と一線を画して安定した上昇基調を示しており、その存在感を増しています 。これらのデータは、まさに不透明な時代における金の強みを裏付けるものと言えるでしょう。
将来について確実なことは誰にも分かりませんが、多くの専門家が今後数年間の金に強気であることは心強い材料です。前述のように、JPモルガンやゴールドマン・サックスなど大手金融機関は2025年に金価格が過去最高を更新し続ける可能性を指摘しています。背景には、各国中央銀行による金の大量購入が今後も続く見通しや、米ドルがやや過大評価されており下落すると見られていることがあります。米銀大手バンクオブアメリカも「ドル安が進めば金は一段高となり得る」とし、さらに金ETFへの資金流入(個人投資家らが金連動型ファンドを買う動き)が金価格を押し上げると予測しています。また、もしトランプ政権の政策運営に不透明感が残れば投機的な金買いが長引き、強気シナリオでは年末に1オンス$4,000まで跳ね上がる可能性も示唆されています。
もっとも、専門家の予測も絶対ではありません。市場は常にサプライズに満ちています。
肝心なのは、どんな未来が来ても揺るがないポートフォリオ防衛力を備えておくことです。その盾となるのが金(ゴールド)なのです。ワクワクするような高騰劇がなくとも、じわじわと資産を守り増やしてくれる「縁の下の力持ち」が金と言えるでしょう。金に投資する手段も様々で、現物の地金型金貨(ブリタニア金貨)から、金ETF、金鉱株、純金積立などライフスタイルに合わせて選べます。専門家は「不確実性が高まる今こそ金への投資比率を見直す好機」と述べています。ぜひ皆さんも、この黄金のチャンスに目を向けてみてください。
いかがでしたでしょうか?
金(ゴールド)を20~40%組み入れたポートフォリオ戦略の魅力と可能性を、初心者の方にもイメージしていただけたなら幸いです。株式や不動産、FX、暗号資産といった個性的な資産たちに囲まれ、金は静かに、しかし確実にポートフォリオを支える縁の下の力持ちです。映画のヒーローのように目立つ存在ではないかもしれませんが、危機が訪れたそのとき真っ先にあなたの資産を守り抜いてくれる頼れる相棒となるでしょう。
2025年以降、世界はさらに予測困難な時代に突入するかもしれません。しかし、「守り」を固めた投資家は慌てる必要がありません。金という輝く盾を持っていれば、どんな荒波にも立ち向かえるからです。
ぜひ皆さんも、ポートフォリオに黄金の輝きを加えてみませんか?
それは将来の自分への頼もしいプレゼントになるはずです。