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資産運用ニュース |
2025.04.18 |
小川竜一 R-TRUST investors Inc. |
突然ですが、いま世界中の国々がこぞってGOLDを買い集めていることをご存じですか?
米国、ドイツ、中国、ロシア… どの国も、かつてない規模で金を蓄えています。2022年と2023年の中央銀行による金の純購入量は、それぞれ1,000トン超え。これは過去50年以上で最大の水準です。
では、なぜ彼らはこっそりと金を買い漁っているのでしょうか?
「金は利息もインカムも生まないから、投資対象としては微妙…」
もしあなたがそう考えているなら、それこそ大きな勘違いかもしれません。
金は、世界共通の「通貨」なのです。
株式や不動産、FXで資産を増やしている投資家の中でも、“本当に成功している人”は、しっかり金をポートフォリオに組み込んでいます。なぜなら、金の持つ「本質的な価値」を理解している人だけが、投資パフォーマンスを最大化できるから。特に、これからの時代は金を持っているかどうかで、 資産を守れるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
では、あなたはどうでしょう?
・ 中央銀行が金を買い漁る本当の理由とは?
・ 金を持つことで、資産運用はどう変わるのか?
・ 金はポートフォリオの何%に組み込むべき?
この答えを知れば、あなたの投資戦略は一段上のステージへ進むことになります。
投資のプロたちはすでに行動を始めています。あなたの資産を、未来を守るために、しっかりとポートフォリオ戦略を組み立てましょう!
今回の「DEVOTIONレポート」はそんなお話。ぜひ参考にしてください。
近年、世界各国の中央銀行が競うように金(ゴールド)を買い増しています。実は2022年の年間購入量は1,082トン、2023年も1,037トンと2年連続で1,000トンを超え、これは過去50年以上で例のない規模でした。特に中国(225トン)やポーランド(130トン)、シンガポール(77トン)などが大量購入しており、中国人民銀行の保有量は2023年末時点で2,235トンに達しています。その結果、世界の公式な金保有残高は2023年末で約36,700トンにも上りました。金は利息もインカムも生まないにも関わらず、なぜ各国の中央銀行がこれほど熱心に買い漁るのでしょうか?
最大の理由は、金が「どの国にも依存しない通貨代替資産」だからです。中央銀行にとって金は、自国通貨や外貨(米ドルなど)の価値が揺らぐ非常時に備える「経済の安全保障」の役割を果たします。例えば戦争や金融危機で多くの国の通貨や株式が急落しても、金は世界共通の価値を持ち続け、安定資産として機能してきました。2008年のリーマン・ショック時には株式や不動産が大暴落しましたが、金は価値を保ち続け年末時点で5.5%の上昇を記録するなど、その強さが改めて注目されました。こうした危機への備えとして、中央銀行はまさにリスクヘッジの「保険」として金を長期保有しているのです。
さらに金は、発行主体を持たない「究極の安全資産」でもあります。紙幣や国債は発行元である国家や企業の信用に依存しますが、金そのものには発行者がおらず、誰かの財政破綻によって紙くずになる心配がありません。言い換えれば、金は価値がゼロにならない実物資産なのです。この特性により、金は中央銀行にとって信頼できる価値の貯蔵手段となっています。金は利息こそ生みませんが、インフレによる通貨価値の目減りに対するヘッジ(防衛手段)としても機能します。実際、米ドルの実質金利(名目金利-インフレ率)がマイナスの局面では、金価格は年率+15.3%もの高い上昇を遂げており、貨幣の購買力低下から資産を守る力があることが示されています。
中央銀行が金を盛んに買い増す背景には、地政学リスクや主要通貨への不安もあります。基軸通貨ドルの信頼性が揺らぐ局面では、金の存在感が増します。各国が外貨準備として金の割合を高めているのは、外貨(ドルなど)偏重のリスクを分散し、自国の経済・通貨を下支えする狙いがあるのです。言わば、中央銀行はリスが冬に備えて木の実を蓄えるように、有事に備えてせっせと金を蓄えているわけです。その結果として金の需要が底堅く支えられ、長期的な価格上昇要因にもなっています。このように「金は通貨である」との視点で各国が重視する姿を見ると、私たち個人投資家にとっても金の重要性が実感できますね。
では、ここで金と他の代表的な投資対象を比較してみましょう。株式やFX(外国為替証拠金取引)、不動産といった資産と金には、それぞれどんな特徴があり、どのように価格が変動しやすいのでしょうか?初心者の方にもイメージしやすいよう、ここではスポーツのチームに例えて説明します。株やFXが攻撃のエースストライカーだとすれば、金は守備のゴールキーパーのような存在です。それぞれの「選手」の役割を理解して、資産ポートフォリオをバランス良く組み立てることが大切です。
💎 株式投資
企業の成長に伴う高いリターンが狙える一方、景気や業績に左右され変動が大きいです。企業業績や経済指標、金利動向などが株価を上下させ、最悪の場合倒産で価値がゼロになるリスクもあります。まさに攻撃力は高いもののディフェンスの弱いストライカーと言えます。
💎 FX(外国為替)
米ドルやユーロなど通貨の価値変動を利用した投資です。金利差や経済指標、国際情勢によって為替レートが日々変動します。レバレッジを利かせて大きな利益を狙えますが、その分損失リスクも大きくハイリスク・ハイリターンの代表格です。例えると、試合展開を読みにくいトリッキーなフォワードのようなものです。
💎 不動産投資
マンションや土地など実物資産への投資で、賃料収入という安定収益が期待できます。値動きは比較的緩やかですが、流動性が低く、経済状況や金利に応じて評価額が変化します。大きな初期資金が必要で地域の需要供給にも影響されますが、長期保有で堅実なリターンも見込めます。堅実なミッドフィルダーのイメージでしょうか。
💎 金(ゴールド)
値動きは比較的緩やかで、株式ほど急騰急落することは稀ですが、為替や金利、需給要因で変化します。配当や利息を生まない代わりに、世界共通の価値と安全資産(世界最強の無国籍通貨)としての地位があります。他の資産と値動きの連動性が低く(相関が低い)、リスク回避ムードの際に買われる傾向が強いのが特徴です。守備に徹しつつ、いざというときチームを救うゴールキーパーのような頼もしさがあります。
リスク・リターンの比較で言えば、長期的な平均リターンは一般に「株式 > 不動産 ≒ 金 > 債券 > 預金」とされます。しかし、リターンの高さには常にリスク(変動の大きさ)が伴います。株式は長期では上昇しやすいものの景気後退期には半値になることもありますし、FXはプロでも予測困難な値動きを見せます。一方、金は株式や通貨と逆相関になる局面も多く、安全資産としてポートフォリオ全体の安定性を高める効果が期待できます。例えば、2020年のコロナショックでは、世界中の株式市場が暴落する中で金は一時的に下落した後いち早く値を戻し、その後は逆に史上最高値を更新する勢いで上昇しました。このように金は「有事に強い」ため、他の資産が振るわない時に損失をカバーしてくれる頼れる存在なのです。
また価格変動の要因にも違いがあります。株式は企業の業績や将来性、投資家マインドで動き、不動産は経済成長率や金利、水害リスクなどローカル要因も絡みます。FXは各国の金利差や政局ニュースに敏感で、短期的な思惑で乱高下することもあります。これに対し金は、インフレ期待や実質金利(*物価上昇を考慮した金利)の動向、ドル相場、中央銀行や投資家の需給バランスなどが主な要因です。「金利が付かない」金は、金利上昇局面では相対的に魅力が薄れる半面、インフレや低金利の局面では資産保全先として脚光を浴びます。実際、米国がゼロ金利政策をとっていた2010年代以降、金価格は長期上昇トレンドを描いてきました。
総じて、金の強みは「守りの資産」であることです。他の資産が好調なときは控えめでも、ひとたび経済に嵐が来れば頼りになる避難所となります。株式・FX・不動産という攻めの資産に対して、金は守りの砦と言えるでしょう。資産運用では攻守のバランスが大切ですから、金を組み入れることでポートフォリオ全体の安定感を高める効果が期待できます。
金投資の魅力は、資産形成期の初心者だけでなく、すでに大きな財産を築いた富裕層(経営者や医師など)にも認められています。むしろ、彼ら富裕層こそリスクヘッジと資産防衛の目的で金を巧みに活用しているのです。資産規模が大きいからこそ、一度の危機で被る損失額も甚大になりえます。そこで「失っては困る大切な資産の一部を金で守る」という戦略を取っているのです。
過去の経済危機における金の活躍ぶりを見ると、その理由が腑に落ちるでしょう。例えば2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)では、株式市場が数十年に一度の大暴落に見舞われました。富裕層といえど株式や不動産で大きな損失を被った人は少なくありません。しかしその一方で、金価格は2008年に年間で約5%上昇しプラスで終えています。当初はパニックで売られる局面もありましたが、最終的に安全資産として買い直され、しっかりと価値を維持したのです。また2020年のコロナショック時には、金は春先に一時的な下落こそあったものの、その後急速に回復し、同年夏には史上最高値を更新しました。他の金融資産が軒並み急落する中でいち早く持ち直した金の値動きは、危機下での頼もしさを示すものです。
富裕層が金を好む背景には、こうした「有事の金」の実績があります。不測の事態で株や不動産が値下がりしても、金がポートフォリオ全体の下支えとなり、資産の目減りを抑えてくれる可能性が高いのです。特に企業経営者などは、自社株や事業用不動産など自身のビジネスと運命を共にする資産を多く抱えます。そのため、自分ではコントロールしきれない外的リスク(景気悪化や災害、戦争など)に備える資産分散が欠かせません。金は古来より「最後の拠り所」として王侯貴族や富裕層に愛されてきましたが、現代でもその位置付けは同じなのです。
また、富裕層にとって金は資産の一部を現金や株式以外で持つことで得られる心理的安心ももたらします。例えば大口預金者にとって、万一の銀行破綻や預金封鎖といった事態は想像もしたくないでしょう。これに対し金現物であれば手元保有も可能ですし、どの国でも換金できる流動性があります。「世界中どこでも通用するお守り」をポートフォリオに忍ばせている感覚かもしれませんね。実際、資産家の中には自国通貨に偏った資産構成を嫌い、一定割合を金や海外資産で保有する人が多くいます。金を持つことでドルや円の価値下落リスクを分散し、財産全体のカウンターバランス(拮抗力)にしているのです。
もう一つ、金はインフレに強い点でも富裕層に重宝されています。インフレ局面では現預金の実質価値は目減りしますが、金は貨幣価値が下がるほど相対的に価格が上がりやすい傾向があります。1970年代のような高インフレ期には金価格が急騰し、資産防衛のヒーローとなりました。こうした「通貨の番人」とも言える特性から、金は富裕層の長期資産防衛戦略の要となっています。
まとめると、富裕層が金を保有するのは「資産の保険」をかけるためと言えます。大切な資産をあらゆる危機から守り抜くため、金という堅固なお守りをポートフォリオに組み込んでいるのです。これは決して特別な人だけの戦略ではなく、規模の差こそあれ私たち一般の投資家にも応用できる考え方です。次のセクションでは、その金を具体的にどう活用して資産運用のパフォーマンス向上につなげるかを見てみましょう。
安全資産としての魅力を理解したところで、実際に金をポートフォリオに組み入れる方法について解説します。金はそれ単独で運用益を生むというより、他の資産と組み合わせて効果を発揮する名脇役です。ここでは、金を取り入れる割合の目安や具体的な投資手段について見ていきましょう。
◆ ポートフォリオへの組み入れ比率はどのくらい?
金をどの程度の割合で持つべきかは、投資家のリスク許容度や市場環境によりますが、一般的に10~30%前後を目安に組み入れるケースが多いです。例えば、全資産の10%程度を金に配分し、残りを株式や債券、不動産などに配分することで、ポートフォリオ全体のリスク分散効果が高まります。10%~30%というのは一つの目安であり、状況によって柔軟に調整すると良いでしょう。実際、平時は30%程度でも、世界情勢が不安定な時期には金の割合を40~60%に高める富裕層もいます。逆に市場が安定していると判断すれば10%以下に抑えることもあります。重要なのは、「金を何%持っていれば自分の資産は安心か」を考え、自分なりの適切な比率を見極めることです。
初心者の方であれば、まずは全体の20%程度からスタートし、市場の状況や金価格の動向を見ながら徐々に調整してみると良いでしょう。例えば資産1,000万円の方なら最初は200万円分程度を金にしてみる、といった具合です。金額にすると少なく感じるかもしれませんが、その20%が危機の際にポートフォリオを下支えしてくれる心強い盾となり得ます。まさに「転ばぬ先の杖」として金を携えておくイメージですね。
◆ 金投資の具体的な方法(現物・ETF・CFDなど)
金への投資手段には大きく分けて「現物購入」と「金融商品」の2種類があります。それぞれメリット・デメリットが異なりますので、自分に合った方法を選びましょう。
✴️ 現物の金を購入
金地金(ゴールドバー)や地金型金貨を実際に購入する方法です。ジュエリーショップや専門商社、銀行窓口などで売買できます。手元に実物資産が残る安心感が最大のメリットで、極端な話、金融システムが止まっても手元の金は価値を持ち続けます。富裕層の中には自宅やショップの保管サービスに地金型金貨を保管している方もいます。ただし、現物は保管や盗難のリスクがあり、購入時に手数料やプレミアム(加工費)がかかる点には注意が必要です。また、売却時には業者によって買い取り価格が異なることもあります。
❇️ 金ETF(上場投資信託)
金価格に連動するETFを証券会社の口座で売買する方法です。株式と同じように市場で取引できるため、少額から手軽に金投資を始められます。ETFの多くは信託銀行等に金現物を保管して裏付け資産としていますので、自分で金庫を用意する必要もありません。売買手数料も小さく流動性も高いので、初心者には扱いやすい方法です。ただし、ETF自体には運用管理費用(信託報酬)がかかること、配当や利子が出ないため長期保有中のインカムゲインは得られないことは留意しましょう(値上がり益狙いの投資です)。また、日本の金ETFの場合、売却益に約20%の譲渡益課税がかかりますが、現物の売買益には50万円の特別控除があるなど税制上の扱いが異なる点も覚えておきたいところです。
❇️ 金CFD・先物取引
金の価格連動型の差金決済取引(CFD)や先物取引を利用する方法です。証拠金を担保にレバレッジを効かせて金価格の上下に投資できます。少ない資金で大きな取引ができ、短期売買やヘッジ目的に適しています。例えば「金価格が下がりそうだから先物で売りを建てておく」ことで、現物やETFを保有していても値下がりリスクを相殺するといった使い方も可能です。熟練した投資家やプロがリスクヘッジに活用する手法ですが、〝価格変動が大きい時に証拠金不足でロスカット(強制決済)〟になるリスクもあり、初心者にはハードルが高めです。最初は無理に手を出さず、慣れてきてから検討すると良いでしょう。
❇️ その他の方法
上記以外にも、純金積立(毎月一定額で金を積立購入する)や、金関連の投資信託・金鉱株への投資など間接的に金価格に連動する商品もあります。純金積立はドルコスト平均法でコツコツ買えるので初心者向きですし、金鉱株は金価格以上の値上がり益が狙える反面、経営リスクも伴います。目的に応じて組み合わせるのも一つの手です。
金投資の手段は様々ですが、いずれにせよ大切なのは「金を保有する目的とポートフォリオ戦略を明確にする」ことです。ただ値上がりを期待して短期売買を繰り返すのはプロでない限り難しく、せっかくの金の長所を活かしきれません。そうではなく、「株や不動産が値下がりしたときにこの金が支えてくれる」「インフレで円の価値が下がってもこの金がカバーしてくれる」といった役割を意識して長期スタンスで保有することが基本。実際、専門家も「有事に備えて金をポートフォリオに組み込んだ長期運用が基本」と助言しています。金は派手さこそありませんが、いざというとき頼りになる縁の下の力持ちです。長期の視点で育てていく気持ちで向き合いましょう。
最後に視点を冒頭のテーマに戻しましょう。「金は通貨である」という考え方に立てば、金投資は単なる商品投資ではなくもう一つの通貨を持つことだと言えます。円やドルで資産を持つだけでなく、「第三の通貨」として金を一定割合ホールドするイメージです。この発想は特にインフレや円安が進行した局面で威力を発揮します。実際、2022~2023年にかけて日本でも物価上昇と円安が同時に進みましたが、その間金価格(円建て)は過去最高値を更新し続け、金で資産を持っていた人は恩恵を受けました。金という通貨をポートフォリオに組み込むことで、既存資産のパフォーマンス改善やリスク分散効果が期待できるのです。
もちろん、「金だけ」に投資を集中させるのは得策ではありません。金はあくまでポートフォリオ全体のバランスを取るためのコマの一つです。株式や債券、不動産などそれぞれの資産には役割があり、金はその中で異なる動きをする調整役として存在価値があります。まさにスパイスのように適量を効かせることで、全体の味(リスクとリターンのバランス)を整えてくれるのです。
初心者の方も、富裕層の方も、自分の資産配分を見直す際にはぜひ金の活用を検討してみてください。中央銀行がこぞって買い増す動きや歴史的な安全資産としての実績は、金が今なお有効な資産防衛手段であることを示しています。「備えあれば憂いなし」――金という心強い備えを持つことで、きっとこれまで以上に安心感のある資産運用が実現できるでしょう。あなたの大切な資産を守り、育てる頼もしいパートナーとして、金投資の魅力をぜひ活かしてみてください。